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タイムリミットは1年半。「TOKIUM電子帳簿保存」開発の軌跡。

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TOKIUM電子帳簿保存

2023年12月末に宥恕期間が終了した電子帳簿保存法の要件を満たした上で、あらゆる国税関係書類や取引関係書類を電子化して一元管理できるクラウドシステム。

シリーズ累計導入社数2,000社以上(2023年11月末時点)を誇る支出管理クラウド「TOKIUM」における、「TOKIUM経費精算」「TOKIUMインボイス」に次ぐ第3のサービスとなる。

MEMBER

  • 吉田 亨

    プロダクト部 (中途)

    吉田 亨

  • 綿引 友麻

    営業部(新卒)

    綿引 友麻

きっかけは、入社1ヶ月目の新入社員のひとことだった

2022年7月。社名変更やサービスリニューアルで活気づくTOKIUMに、ひとりの仲間が加わった。中途採用で入社した吉田だ。2016年の卒業後、大手総合商社やAIベンチャーを経て、前職のITコンサルティング企業ではプロジェクト推進や新規プロダクト企画に従事した経験を持つ吉田は、ある志を持ってTOKIUMにやってきた。それはほかでもない、SaaS分野で新たなサービス を開発することだった。

社員が急激に増えているTOKIUMでは、会社の成長に応じて新しい部署やポストがつくられることも少なくない。「新規サービスをつくりたい」という吉田の入社にあたっても、新規事業開発を担当するPMM(プロダクトマーケティングマネージャー)チームが新設された。メンバーは取締役の松原、営業部長の上原、そして吉田の3名だ。

チーム設立後の初ミーティングで、さっそく今後着手すべき課題や新サービスについてのアイデアを出し合った。そのなかで吉田が提案したのが、来たる電子帳簿保存法改正に備えた新サービスの開発だ。「電子帳簿保存法改正への対応は、どう考えても大変。すべての企業が自社で対処できるとは到底思えません。ニーズは必ずあります」。吉田は確信と使命感を持って断言した。

2024年1月に施行される法改正では、全事業者を対象として、帳簿や領収書、請求書といった国税関係書類や取引関係書類を紙ではなく原則データで、要件に則って保存することが義務付けられているが、制度が難解で、ほとんどの企業がその対応に頭を悩ませているという背景があった。吉田はそこに目を付けたのだ。既存サービスの「TOKIUM経費精算」や「TOKIUMインボイス」をご利用のお客さまからも不安の声が多く挙がっていたということもあり、その場で新サービスの方向性が決定。吉田が入社したその月から、「TOKIUM電子帳簿保存」の開発がスタートしたのである。

ひとりで地道に初期検証を進め、骨組みを構築

実は既存サービス「TOKIUMインボイス」のオプション機能として、電子帳簿保存法改正に対応できる機能がひっそりと存在していた。そこをベースとし、切り離し、ひとつのサービスとして強化していくというのが今回のシナリオだ。ベースがあるとはいえ、特化したサービスとなると求められる機能の種類や質も変わってくる。まず吉田は、このサービスではどのような機能が必要とされているかを改めて検証していった。

初期検証の方法はおもに2つ。1つ目は、想定される機能や仕様、料金プランに訴求ポイントを添えた初期の営業資料を作成し、お客さまに自ら売り込んでいくこと。「こういうことを考えているのですが利用しませんか?」と近い未来には実際にご購入いただくつもりでお話し、ニーズを聞き出し、ブラッシュアップを重ねていった。

2つ目は、セミナーの開催だ。複雑な法改正について事前に知っておきたいというお客さまにお集まりいただき、解説を交えながら「TOKIUMインボイス」のオプションサポートについてお話しをする。そのなかでうかがった率直なご意見をもとに、またブラッシュアップしていく。これらをひとりで地道に継続することで、「TOKIUM電子帳簿保存」の骨組みができあがっていった。

「これは売れる」という確かな手ごたえを感じるようになってきた3ヶ月後の2022年10月。なんとか単体で販売できる形となり、実際に1件ご成約もいただいた。そしてこのころから、お客さまの細かいフィードバックも増えてきていた。

社内プロジェクト化することで一気に加速

お客さまのニーズをうかがううちに、AI-OCRを利用する案が浮上した。AI-OCR とは、AI技術を組み合わせることで文字認識精度やレイアウト解析精度などを大幅に向上させたOCR(Optical Character Recognition/光学文字認識)技術のことだが、提供するための準備はかなり大変だ。料金プランを考えることはもちろん、社内の役割分担をどう設定し、管理し、統制していくかということも固めていく必要があった。

「これは、とてもひとりではまわらない……」そう感じた吉田は、PMMチームに相談。そして2022年12月、PMMチームに営業部の綿引とその後輩が参加することとなった。「新サービス立ち上げという大きなプロジェクトに、役職のない私や入社1〜2年の後輩がアサインされるのが、TOKIUMらしいなと思います。自分のやりたいことを頑張っていたらチャンスをもらえる、そういう会社なんです」。そう語る綿引は約2年前、「TOKIUMインボイス」の立ち上げにもかかわった経験がある。頼もしいメンバーの加入に、吉田はほっとひと安心した。

これまで吉田がひとりで営業し、ニーズを拾い、ブラッシュアップしてきたが、ここからは綿引が通常の営業先で「TOKIUM電子帳簿保存」について話をし、ニーズを拾ってきては、吉田に伝えてブラッシュアップするような形態に変化。さらに各部署の部長もプロジェクトメンバーに入り、週に一度の定例会も開催されることとなった。

このように規模が大きくなり、関わるメンバーも増えてきたところで、最終目標、中間目標、予算なども決定。最終目標は、約5ヶ月後となる2023年5月までに全社的に体制を整えて、サービス提供を開始すること。このあたりから、「TOKIUM電子帳簿保存」の開発スピードは一気に加速しはじめた。

後れを取った分、ほかにはないサービスをつくりたい

着実に進化を続ける「TOKIUM電子帳簿保存」だったが、大きな懸念点もあった。法改正の時期が決まっているため、時間に限りがあることだ。開発をはじめた時点ですでにリリースされていた他社サービスもあるなか、短期間で、お客さまのお役に立ち、選んでいただけるサービスにするためにはどうすればいいのか……。

考え抜いた結果たどり着いたのは「やっぱりTOKIUM独自の強みであるオペレーター入力システムを活かそう!」というところだった。TOKIUMはソフトウェアを扱う会社、ではなく、時を生むことをミッションとする会社。そのためなら手段は限定せずに最適解を探していく社風がある。ITの力だけでは及ばないところは、人力で補う。これこそがTOKIUMの持つ独自性だ。手入力やスキャン作業を行なうオペレーターを管理するオペレーション部門、契約後のサポートをする導入部門のメンバーと多くのやりとりを重ね、社内での運用体制を確保していった。

オペレーターによる手入力のメリットは精度の高さや柔軟な対応力であり、TOKIUMを選ばれるお客さまにとっての大きな安心材料になっているが、人が動く分、コストがかかってしまう。2024年1月の電子帳簿保存法改正が本格スタートするまでにはまだ猶予があるため、実際の運用イメージが湧きにくいと感じるお客さまとしては、できれば予算を抑えてスモールスタートにしたいと考えるはずだ。そこで、便利な上に料金も低く設定できる「AI-OCRプラン」と、コストはかかるが精度の高い「オペレーター入力プラン」を用意。低予算でスタートし、本格対応が必要になったら状況やお好みに合わせてスムーズに切り替えられるようにした。

しかし今度は、料金の低い「AI-OCRプラン」にどれほどの人手を割けるかという社内リソースの問題も浮上してきた。導入サポートに工数をあまりさけない分、お客さま自身で設定していただく仕様に落ちついたが、その方法などについてもかなり細かく考えていく必要があった。

さらに大変だったのは、既存のサービスとの整合性を取ることだった。「一緒に使ってくださるお客さまのことを考えると、整合性がなければ使いにくいし、社内のオペレーションも取りにくいんです。こんな仕様にしたい!月払いや従量制の料金設定にしてあげたい!と考えても、整合性がとれないので諦めるといった細かい取捨選択をたくさんしてきました」と吉田はそのときのジレンマを思い返す。

綿引も同じく、このときの苦悩をこう語る。「本当ならばお客さまのためにあれもこれもと盛りだくさんの機能を提供したかったところですが、期限や提供料金のことを考えるとそれはできない。ならばどこをそぎ落としてどこを強化するかといった判断を、自分自身で下さなくてはならないことが、何よりも大変でしたね……。でも、お客さまの言葉の奥にある本当のニーズを見極めていくことで、他の機能でカバーできることが分かれば、新規機能にさくはずだったリソースをほかにあてられる。そういったことは、『TOKIUMインボイス』のときの経験が活きたと思います」

こうして、ほかにはない唯一無二のサービスを目指し、ひたすらブラッシュアップを繰り返す日々が過ぎていった。そしてついに、お客さまと一緒につくりあげたともいえるこのサービスが、さらに一歩前進する局面を迎える。

ついに全社展開し、想像以上の人気サービスに

2023年6月。吉田がひとりで初期検証を重ね、綿引らとチームとなり社内プロジェクト化した「TOKIUM電子帳簿保存」が、全社展開されることとなった。TOKIUMのサービスの第三の柱として、全社一丸となって提供するための体制が整えられたのだ。

「目標は、2023年12月までに約500社受注。到底達成できない高い目標として設定したつもりだったのですが、結局600社以上のお客さまにご契約いただくことができました。特に最後の2〜3ヶ月くらいは駆け込み需要もあり、うれしい悲鳴が社内のいたるところで聞かれました(笑)」と綿引は振り返る。

「TOKIUM電子帳簿保存」をきっかけに、連携するとさらに便利になることから「TOKIUM経費精算」や「TOKIUMインボイス」をご利用くださるお客さまも増加。クロスセルのフックとなるサービスへと成長した。

だがここで終わりではない。ほかのサービスと同様、今後も常に営業担当がお客さまからのご要望をうかがい、法改正、トレンド、新技術の登場なども鑑みながらブラッシュアップし、ベストな状態をキープしていく。「最終的には、意識しなくても電子帳簿保存法対応が完了しているようなサービスを目指したいんです」とすでに進化させることを考えている吉田。新規プロジェクトを進めるにあたりプレッシャーはなかったのかと聞いてみると、こんな答えが返ってきた。「ちょっとプレッシャーがあるくらいの仕事でないと、あまりやる意味がないかなって。それくらいのことをやりたいなと思って入社してきましたから」

さらに多くの時を生むため、次のステージへ

「TOKIUM経費精算」「TOKIUMインボイス」「TOKIUM電子帳簿保存」に入力する領収書、請求書、見積書や発注書などのデータを分析すると、自然とその企業のお金の流れが見えてくる。最近注目を集めているBSM(Business Spend Management)、つまり会計や購買といった支出データを分析し、支出の無駄を減らして企業にプラスとなるコストマネジメントをすることも、難しくはないはずだ。

さらにTOKIUMユーザー2,000社以上のデータをもとに分析や比較をすることで、コンサルタントとして企業の支援をすることもできるだろう。

栄養価の高い土壌のように、情熱と意欲に満ちた濃い人材が集まるTOKIUMでは、もう新しいプロジェクトの芽が育ちはじめている。

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